慢性疼痛とは?
神経障害性疼痛のテレビCMで、「ほうっておくと慢性化するかもしれません!」と言っています。慢性化したらどうなるのでしょうか?実は、「慢性疼痛」という医学用語が存在するのです。その定義は、「急性疾患の通常の経過あるいは創傷の治癒に要する妥当な時間を超えて持続する痛み」となっています。ある病気の相場の期間を超えて長引く痛みということですね。通常の急性期の痛みとどう違うのでしょうか?
一般に、外傷などの急性疼痛が慢性化する要因として創部の瘢痕化が考えられています。瘢痕組織には痛みに関与する化学物質が増加しているといわれています。こうして増強された痛みが脊髄の神経細胞を刺激し、炎症を起因する化学物質を遊離させ悪循環を生じさせると考えられています。
また、痛みの伝達の中継所である脊髄レベルで、痛みが修飾を受けることも知られています。痛みを伝達する経路では、痛み刺激が持続すると正常では反応しないような弱い刺激に反応したりするような現象を生じます。さらに、それを感受する皮膚の領域も広がることも知られています。
さらに、痛みを認知する脳においてもその認知の仕方が変化していることがわかってきています。
まず、視床という部位では、急性の疼痛の場合には活動が活発化するが、疼痛が慢性持続すればするほど活動が低下するという報告があります。視床というのは身体全体の全ての感覚刺激が集まってくる場所ですので、痛みの刺激が入れば活動は活発化するのが普通です。にもかかわらず活動が低下する原因については、まだ、はっきりしていません。
また、アロデニアという軽微な知覚刺激で強い痛みを自覚する慢性疼痛の症状の場合、その刺激によって活動する脳の部位は、正常者で活性化する視床でなく、前頭葉などの他の部位であることが知られています。
さらに、上記の様なアロデニアを有する患者さんは、体の一部を触っている画像を見ただけで、正常者では痛そうな画像を見た時に興奮する前頭葉の一部分が活性化することも知られています。
つまりのところ、慢性疼痛という状態は、痛みが続いた結果、痛みの伝導経路や脳の認知に変化が起こり、非常な痛がり(些細な刺激でも痛みを感じる)ようになった状態といえましょう。