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医療法人ラザロ会 江口クリニック

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脳・神経疾患

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認知症の治療薬Ⅱ(周辺症状の治療薬)

アルツハイマー病の症状は中核症状(認知障害)と周辺症状(精神症状・問題行動)分けられます。中核症状に対する薬は、二種類あります。一方、周辺症状に対しては、症状によって種々の薬を使います。私は、中核症状に対する投薬を「患者さんのための」治療、周辺症状に対する治療を「家族のための」治療(結果として患者さんのための治療)というように説明しています。中核症状に対する薬は、文字通り認知機能を改善するための薬ですが、周辺症状の治療は、認知機能を改善させるのではなく問題行動を抑制し、家族の方と家で共に過ごせるようにするための薬だからです。現時点で、アルツハイマー病その他の認知症は根治できる疾患ではないので、最終的には施設介護になることが多いのです。したがって、認知症の治療の目標は、より長く自宅で家族とともに生活できる期間を延長することにあります。徘徊や不潔行為、妄想、暴力行為などの周辺症状が強いと、家族や介護者が疲弊し、家での介護が困難となり結果として施設介護に移行せざるをえません。したがって、家族の苦労を軽減させる(家族のための)治療ではあっても自分の家での療養期間を長くすることができ結果的には患者さんのための治療にもなります。

周辺症状は、落ち込んで動かなくなる、食べなくなる等の陰性症状と落ち着かない、攻撃的、徘徊等の陽性症状まで多彩な症状がありますので、様々な薬を使い分けることになります。中核症状は、まあ、誰がやっても使う薬は似たり寄ったりですが、周辺症状の方は選択肢が多い分だけ腕の見せ所という感じがします。

多くの場合、こういった周辺症状を抑制する薬には、ふらつきや、身体が動きにくくなる(パーキンソン症候群)といった副作用もあります。また、御高齢や脳の委縮が進行している方では、特にそういった好ましからざる症状が出やすいように思います。ごく少量で少しずつ調整していくことになります。認知機能そのものを改善することは困難ですが、こういう周辺症状が軽減し、患者さんの表情が明るく穏やかになり、介護する家族にも笑顔が出るのは、治療する側としても喜ばしいことです。

認知症の治療(中核症状の治療薬)

本邦における信頼のできる複数の調査で、高齢になると6人に一人が罹患するという認知症。その多くは、その予防に関しては、あれがよいこれがよいと様々な報告が出ていますが、現時点で確実に有効な(科学的に検証されたデータ)はないというのが現状です。また、治療に関して、アルツハイマー病に対する、アリセプトの様なコリンエステラーゼ阻害剤とNMDA拮抗阻害薬が出て以来、最近、新しい薬剤は出ていません。また、これらの薬にしても、病気の進行を遅らせることができても完全に止める効果はありません。

治療薬に目新しいものはありませんが、最近、認知症や運動障害の鑑別に、MRI以外に、SPECT(脳血流検査)やDATスキャンや心筋MIBGが外来での検査として利用可能となってきていますので、非定型的な認知症の診断に関しては、以前の様な臨床的印象だけでなく多少、客観的データを使えるようになってきました。・・・まあ、診断できても治療薬はないのですが。

片頭痛・群発頭痛の注射薬

片頭痛と群発頭痛は、強い痛みを生ずる厳しい頭痛の双璧でしょう。昔は、カフェインやエルゴタミン製剤などで対象治療を行っていましたが、その効果は満足できるものではありませんでした(早い話があまり効かなかった)。トリプタン製剤の錠剤(イミグランR)が発売され、格段に頭痛の抑制ができるようになりました。とはいっても、口から飲む錠剤ですから、飲んでから効果が出るまで40分以上はかかります。典型的な片頭痛の様に、頭痛の起こる前に閃輝暗点などの前駆症状が出る方ならばいいのですが、前兆なくいきなり出る方の場合ですと、どうしても頭痛を抑えることが困難な場合もあります。

錠剤発売の少し後に、トリプタン製剤の点鼻薬が発売されました。これは口から飲むより吸収が早くなるので効果発現が早くなってよいと大いに期待したのですが、少なくとも私の個人的な経験では、患者さん方の評判は芳しいものではありませんでした。また、トリプタン製剤の口腔内崩壊錠(口の中で溶けるので水無しで服用できる)も、吸収される経路は錠剤と変わらないので効果の発現までの時間も変わりありません。

片頭痛に対しては、そこそこ効果を発揮するトリプタン経口製剤ですが、群発頭痛、特に男性の群発頭痛に対しての効果は芳しいものではありませんでした。この頭痛は、本当に苦しい頭痛の様で、様々な薬もトリプタン製剤とともに出してみるのですが、全くと言っていいほど歯が立ちませんでした。

トリプタン製剤の注射薬は、実は、経口製剤より1年ほど早く発売されていました。そして、この薬を皮下注射は、経口よりも圧倒的に即効性で効果も格段によいものでが、注射ですから病院まで来てもらわねばならないのでした。群発頭痛は、ほとんどの場合、一日の決まった時間に毎日のように起こります。お近くの方で、朝お昼に起こるのならば、まだよいのですが、夜中に激痛で目を覚ます方も多々おられるのです。その後、トリプタンの注射薬が自己注射が発売されました。これによって、患者さんが自宅で、自分で注射できるようになり、ようやく群発頭痛にもなんとか効果のある治療が可能となったように思います。

大変興味深いことに、この自己注射を希望される方は、ほとんどが男性の群発頭痛の方だということです。通常の片頭痛の方ですと、男女を問わず、ほとんどの方が経口トリプタン製剤を希望されます(誰だって自分で注射するのは気が進まないでしょう)。また、群発頭痛であっても、女性の方は比較的、経口製剤でも効果があるようで多くの場合、注射を選択されません。

さて、最後に、令和3年に登場した、片頭痛予防薬としての注射(抗CGRP受容体に作用する薬剤)、これは、月に一回来院時にクリニックで注射する形になります。対象は、たくさん片頭痛予防薬を服用しても、月に何度も激しい片頭痛発作が起こる方が対象です。この注射は、大変成績がよく、投与された方は、全例、激しい頭痛発作の回数やその程度が著減しています。が、しかし、現在の所、とても薬代が高価(薬自己負担分12000円)なのが一番の難点です。