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医療法人ラザロ会 江口クリニック

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運動器

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膝の水を抜くとクセになる?

変形性膝関節症等では、しばしば、膝に液が貯留します。いわゆる、「膝に水がたまった」状態です。この膝の水を抜くとクセになるので抜いてはいけないという方がいます。本当でしょうか? 私は、寡聞にして、医師でこのような意見をお持ちの方に出会ったことはありません。

一般的には、膝に水が溜まって膨れている状態が続くと、膝関節を取り囲む周囲の組織が伸びてしまう。そうなれば、膝の固定が甘くなり不安定となる、そうなれば、膝関節の変形はさらに増悪すると考えられています。

また、急性の炎症で膝関節に液が溜まり脹れている状態であっても、ドレナージ(排液)は外科の基本的中の基本の考え方ですから、やはり抜くべきでしょう。

少なくとも、水を抜くことによって、クセになるということはありません。

変形性膝関節症って?

実年以降では非常によくある病気で、国内では1000万人以上と推計されています。膝関節の軟骨がすり減った状態です。多くは、体重過多と加齢が主因のようですが、若い頃の外傷や脊髄や脳の損傷で半身筋力低下が原因となることもあります。立ちあがる時や階段昇降などに膝の痛みを生じ、進んでくると普通に歩く時にも痛むようになります。生活が非常に不便になれば手術が必要になります。たとえば、体重が増え、コレステロールや血糖が上昇し、医者から歩けと言われ、急にはりきってウォーキングを始めたりしたときなどによく発症します。

保存的治療・進行防止としては、

  1. 減量:なんといっても体重を落とすことでしょう。たまたま、他の病気で、不幸にして体重が減ってしまったりすると、気が付くと膝痛がましになっているというのはよくある話です。
  2. 下肢筋力強化:太腿周囲の筋力をつけることはとても大切です。早合点して、いきなりランニングしたり、スクワットなどやったりすると、かえって悪化します。膝に荷重(体重)をかけないようにしトレーニングしなければなりません。かなり体重の多いご高齢の方々では、プールでの歩行などは効果があるようです。当院では、リハビリ室に、四頭筋訓練装置をおいて頑張っていただいています。筋力が数値で示されるので、本人の意欲が高まって効果があるようです。
  3. 高分子ヒアルロン酸注入:変形性膝関節症では関節内のヒアルロン酸が減少していますので、これを補充することで軟骨を保護し、進行を抑える効果があります。また、関節の炎症を抑える効果もあるようで、比較的効果の出るのが早い治療です。急性期は週1回、慢性期には2~4週間に一度程度で維持します。約8割の方に効果があります。
  4. 装具治療:変形が比較的軽度で、立ち仕事やウォーキングといった立ち動作が多い方で、O脚気味の方には足底につける装具(靴の中敷きタイプもある)をお薦めしています。膝関節への荷重のかかり方を変えることが目的です。また、かなり進行した方で、年齢や合併症によって手術に危険を伴うような方には、膝装具を処方しています。

腰椎椎間板ヘルニア

坐骨神経痛の原因として一般的には、もっとも有名なものかもしれません。背骨(腰椎)と背骨の間にある椎間板という機構の内部にある髄核が周囲の隔壁を破って飛び出した状態です。これが腰の神経を圧迫して神経痛を起こします。力学的関係からか5個ある腰椎の下の方によく生じます。この場合には、坐骨神経痛(臀部~大腿後面~下腿~足へ放散するような痛み)を生じるのですが、中間あたりのヘルニアでは太腿の外側、上の方に出るヘルニアでは、鼠径部や大腿全面に痛みが出ます。手術するかしないかは悩ましい場合もあります。

絶対に、急いで手術しなければならない場合は、ヘルニアが巨大で通常のヘルニアの様に一本の神経にあたるのではなく腰椎を通る神経全部を圧迫し、排尿や排便に障害をきたし、下肢全体に麻痺が生じるような場合です。

それ以外は、手術するかしないかはケースバイケースということです。上記以外は命にかかわるような大きな障害がのこる病気ではないですから、患者さんの判断が優先されることになります。自営業で仕事を休めないという方で、神経麻痺があり足首が上に向かない状態で、手術を拒否され足首にバンドをまいて仕事を続けられた方もあります(仕事ができているわけですから問題ないといえば問題ないのです)。ただ、以前に比べて技術が非常に進歩しているため、典型的なものでは、背中を手指2本分ぐらいの幅を切るぐらいで手術できるようになり入院期間も短くて済みますので、仕事や日常生活に支障をきたすような痛みや麻痺が1か月以上も続くようなら手術を考えたほうがいいかな・・・というのが個人的な印象です。また、仕事は休めるがその期間を短くしたいという場合でも手術のほうが有利でしょうか。

ただ、典型的な例ではそうなのですが、下肢痛には心因性の場合も少なからずみられます。下肢痛がありMRIで小さなヘルニアがあり、強い痛みがあるというだけで安易に手術すると改善しなかったり、かえって悪化したりする場合さえあります。とても痛い場合でも、医師がMRIをみて少し首をかしげているようなら、あまり強く手術をしてくださいと迫らないほうがいいでしょう。

また、腰椎椎間板ヘルニアの場合、術後一年での同一部位再手術例は5%、10年では10%という報告もあります(私の個人的な経験では3回同一部位に再発した例はありません)。

激しい運動はともかく、日常生活が一応おこなえて、家事や仕事も休まずにできているなら保存的治療。とにかく早くケリをつけたい、仕事を休まなければならないような状態が1~2か月も続くようなら手術を考慮されたほうがいいでしょう。また、中位~上位にあるヘルニアはたいてい手術しなくても済むというのが個人的な印象です。

腰椎椎間板ヘルニアと腰部脊椎管狭窄症

腰椎椎間板ヘルニアと腰部脊椎管狭窄症は、腰・下肢痛みをきたす代表選手でしょう。椎間板ヘルニアは、一般的に知名度が高いようで、ほとんど坐骨神経と同一のように誤解を受けているように見受けられますが、必ずしも坐骨神経痛が出るとは限りません(部位によって異なります)。どちらも、腰椎部分で神経が圧迫・絞扼されて、腰や脚が痛んだり痺れたりする病気です。

かなり大雑把に言ってしまえば(例外は多々ありますが)、比較的急性に、片側の下肢痛で、腰を前屈させるとその下肢痛が増悪するならヘルニア型が疑わしいし、逆に、両側性で腰を前屈させていると楽になり、腰をそらすような姿勢で下肢痛が悪化するならば、狭窄症型が疑わしいとしていいでしょう。

しかし、特に、年配の方ですと、腰椎のMRIを撮影すると、たいていの場合ヘルニアもあり、狭窄症もありといった所見で必ずしもクリアカットに決めつけることができない例が多々あります。

腰椎の圧迫骨折1・・・必ずレントゲンに写る?

ある程度の年齢の方が、尻もちをつくなどの軽い外傷(時には全く外傷らしいエピソードのない場合もある)の後、結構ひどい腰痛が出た場合の話です。すぐに、救急で病院を受診される方も多いです。そして、そこで骨には異常がありませんと言われ安静にしていたが一週間たっても少しも良くならないといって受診される。そこでもう一度レントゲンを撮ってみると腰椎や胸椎といった背骨に圧迫骨折が見られる例を数多く経験します。多くの場合、発症後1~2週間もたてばはっきりしてくるのですが、時には、1~2か月もたたないと明らかにならない例もあります。なかには、MRIを撮影してようやく診断されることもあります。確かに、注意深く見ると、椎体の圧迫骨折の場合には、背中の中心線上に並ぶ棘突起という骨の出っ張りを叩くと痛みが出てわかることも多いのですが、はっきりしない場合もあります。

脚立から落ちたとかである程度の外傷であれば、多くの場合すぐにレントゲン検査で骨折が明らかになることが多いのですが、ある程度の年齢の方で骨粗鬆症を基礎として、前述のような軽微な外傷で生じる圧迫骨折の場合は、発症直後のレントゲンだけでは診断できないことが多いので、1週間も強い腰痛が続くようならレントゲンの再検査やMRIをとられるほうがいいでしょう。