片頭痛・群発頭痛の注射薬
片頭痛と群発頭痛は、強い痛みを生ずる厳しい頭痛の双璧でしょう。昔は、カフェインやエルゴタミン製剤などで対象治療を行っていましたが、その効果は満足できるものではありませんでした(早い話があまり効かなかった)。トリプタン製剤の錠剤(イミグランR)が発売され、格段に頭痛の抑制ができるようになりました。とはいっても、口から飲む錠剤ですから、飲んでから効果が出るまで40分以上はかかります。典型的な片頭痛の様に、頭痛の起こる前に閃輝暗点などの前駆症状が出る方ならばいいのですが、前兆なくいきなり出る方の場合ですと、どうしても頭痛を抑えることが困難な場合もあります。
錠剤発売の少し後に、トリプタン製剤の点鼻薬が発売されました。これは口から飲むより吸収が早くなるので効果発現が早くなってよいと大いに期待したのですが、少なくとも私の個人的な経験では、患者さん方の評判は芳しいものではありませんでした。また、トリプタン製剤の口腔内崩壊錠(口の中で溶けるので水無しで服用できる)も、吸収される経路は錠剤と変わらないので効果の発現までの時間も変わりありません。
片頭痛に対しては、そこそこ効果を発揮するトリプタン経口製剤ですが、群発頭痛、特に男性の群発頭痛に対しての効果は芳しいものではありませんでした。この頭痛は、本当に苦しい頭痛の様で、様々な薬もトリプタン製剤とともに出してみるのですが、全くと言っていいほど歯が立ちませんでした。
トリプタン製剤の注射薬は、実は、経口製剤より1年ほど早く発売されていました。そして、この薬を皮下注射は、経口よりも圧倒的に即効性で効果も格段によいものでが、注射ですから病院まで来てもらわねばならないのでした。群発頭痛は、ほとんどの場合、一日の決まった時間に毎日のように起こります。お近くの方で、朝お昼に起こるのならば、まだよいのですが、夜中に激痛で目を覚ます方も多々おられるのです。その後、トリプタンの注射薬が自己注射が発売されました。これによって、患者さんが自宅で、自分で注射できるようになり、ようやく群発頭痛にもなんとか効果のある治療が可能となったように思います。
大変興味深いことに、この自己注射を希望される方は、ほとんどが男性の群発頭痛の方だということです。通常の片頭痛の方ですと、男女を問わず、ほとんどの方が経口トリプタン製剤を希望されます(誰だって自分で注射するのは気が進まないでしょう)。また、群発頭痛であっても、女性の方は比較的、経口製剤でも効果があるようで多くの場合、注射を選択されません。
さて、最後に、令和3年に登場した、片頭痛予防薬としての注射(抗CGRP受容体に作用する薬剤)、これは、月に一回来院時にクリニックで注射する形になります。対象は、たくさん片頭痛予防薬を服用しても、月に何度も激しい片頭痛発作が起こる方が対象です。この注射は、大変成績がよく、投与された方は、全例、激しい頭痛発作の回数やその程度が著減しています。が、しかし、現在の所、とても薬代が高価(薬自己負担分12000円)なのが一番の難点です。